birth.jpg15分ばかり前に生まれた女の子は、母親の隣で泣きながら私たちの部屋に戻ってきた。
 産声の何と力強いことか!
「よしよし」だの「what happened?」などと応えているうちに泣き止み、白い指を口に持って行こうとしたり、顔を真っ赤にして力んでみたり、いっとき穏やかな表情に戻ったりもするがそれもつかの間、また大きな口を開け声を張り上げて泣き出す。「大丈夫だよ。丸裸で生まれてきて泣くことしかできないあなたを必ず守ってあげるから」と言わずにはおられない。 この産声によって、自分の肺を使って、私たちと同じ空気を吸って生きていけることが確かめられたのだ。
 赤ちゃんの強烈なアピールにひきかえ、今母親になったばかりの娘は、23時間もの苦痛を乗り越えた疲れか、偉業を成し遂げた感動からか、静かにその喜びに浸っているようだった。おめでとう。私の声がふるえてしまった。